STUDIO TORIUMI / OBSERVATORY

締め切りは決まっている
誰も手をつけていない。

人類が終わる時期は、おおむね確定しています。物理で決まっているので、議論の余地がありません。問題はそこではなく、それを回避するための計画が、ほとんど存在していないことです。何が確定していて、何が動いていて、何が止まったのか。数字と出典で並べます。

01 / CERTAIN確定している2つの締め切り

どちらも「起きるかもしれない」ではなく、「いつ起きるか」の話です。

10.8億年±1.4億年 地球の酸素が失われるまで

先に来るのは、太陽の死ではありません

太陽はゆっくり明るくなっています。明るくなると岩石の風化が進み、大気の二酸化炭素が減ります。減りすぎると植物が光合成できなくなり、酸素の供給が止まります。

そのあとの地球は、メタンが多く、二酸化炭素が少なく、オゾン層が無い世界になります。生き残るのは酸素を使わない生き物だけです。

この見積もりでは、地球が酸素のある星でいられる期間は、地球の一生のうち2〜3割にすぎません。すでに後半に入っています。

尾崎和海・Christopher Reinhard「The future lifespan of Earth's oxygenated atmosphere」Nature Geoscience(2021)

約50億年太陽が赤色巨星になり、白色矮星になるまで

その姿は、もう観測されています

太陽は膨張して木星軌道の近くまで達し、その後で地球ほどの大きさまで縮んで白色矮星になります。内側の惑星は失われます。

これは計算だけの話ではありません。2021年、ケック望遠鏡が「白色矮星のまわりを、木星軌道の距離で木星に似た惑星が回っている」星系を捉えました。内側の惑星は消えていました。未来の太陽系を、実際に見たことになります。

タスマニア大学ほか、Nature(2021年10月)/W.M.ケック天文台

いま10.8億年後

左端の細い線がホモ・サピエンスが存在してきた約30万年です。全体の 0.028%。締め切りまでの長さは、人類の歴史のおよそ3,600倍あります。

02 / NOT CERTAIN混ぜてはいけないもの

「人類滅亡」の話では、確定した物理と、確率の話がよく混ざります。分けたほうが、どちらも正しく怖がれます。

  • 小惑星の衝突——起きる確率の話。しかも唯一、人類が実際に手を打った種類の危機です(下記)
  • 超新星、ガンマ線バースト——確率。近い将来に該当する天体は知られていません
  • 気候変動、核、パンデミック、AI——どれも深刻ですが、これらは「人類が終わる」ではなく「文明が壊れる」の話です。回復の余地があります
  • 太陽の膨張と酸素の消失——これだけが確定で、回復の余地がありません

03 / DOINGいま実在する取り組み

動いているものと、止まっているものを、同じ表に並べます。

DART / Hera(惑星防衛)動いている

2022年9月、NASAの探査機が小惑星の衛星に意図的に衝突し、その軌道を実際に変えました。人類が天体の動きを変えた、最初の例です。

2024年10月にESAのHeraが打ち上がり、2026年に現地へ到着します。衝突後を詳しく測り、この方法を「一度うまくいった実験」から「繰り返し使える技術」にするのが目的です。

ここだけは、本当に成果が出ています。ただし守れるのは小惑星からだけです。

Breakthrough Starshot(恒星間探査)止まった

光の15〜20%の速さでアルファ・ケンタウリへ超小型探査機を送る、という計画でした。太陽系の外へ出る道筋として、いちばん有名だったものです。

2025年9月、無期限の停止が報じられました。予定していた1億ドルのうち、使われたのは約450万ドルでした。第1段階の成果として論文は残っています。

「太陽系の外へ」を掲げた旗艦計画は、いま動いていません。

火星・月への移住進んでいる。ただし別の問題

実際に前進しています。ただし火星も月も、同じ太陽を回っています。太陽が膨張すれば、まとめて失われます。

移住が効くのは、地球規模の災害・戦争・小惑星に対してです。締め切りそのものへの答えではありません。そこを混同した記事が多いので、分けて考えてください。

太陽の死に取り組んでいる計画は、地球上に一つもありません。

予算がつかないのは、無関心だからではありません。10億年が、人間の意思決定の単位から遠すぎるからです。選挙は4年、企業の計画は5年、いちばん長い国家事業でも数十年。10億年という数字を扱える仕組みを、人類はまだ持っていません。

本当の問題は太陽ではなく、私たちがその長さを扱えないことのほうです。そしてこちらは、技術ではなく制度の問題なので、いまから手をつけられます。

04 / HOPEそれでも、道筋はある

誇張せずに書ける範囲で。

  • 時間は本当にある。10億年は、生命が単細胞から人間になるのにかかった時間より長い。同じだけの変化が、もう一度起こせる長さです
  • 地球を動かす案は、物理としては成立します。小惑星を繰り返し近くを通らせて地球の軌道を少しずつ外へずらす、日射を遮る、といった案が真面目に検討されています。いまの技術では無理ですが、原理的に不可能ではありません
  • 惑星防衛は、実際に成功しました。「宇宙規模の脅威に人類が手を打てる」という前例が、2022年にできています。規模は違っても、証明は済んでいます
  • いま必要なのは技術より、長い時間を扱える仕組み。1000年続く組織、10万年もつ記録の方法、世代を超えて引き継ぐ設計。ここは今日から始められて、しかも誰も本気でやっていません

05 / LATEST自動で集めている、関連する動き

最終取得:2026-08-30

取りに行っている先。NASA、NASA Science、ESAの宇宙安全・宇宙科学の公式RSSです。 小惑星・惑星防衛・恒星間・系外惑星に関わる語で点をつけて絞っています。 自動なので、関係の薄いものが混ざることがあります。

06 / FOLLOW追いかけるための入口

個人の発信は移り変わるので、組織の公式なものだけを置きます。ここから辿るのが結局いちばん確実です。

07 / SOURCES出典

最終確認:2026年08月31日。年数は研究によって幅があります。ここに書いたのは、出典に示された値そのままです。 「〜と言われている」で済ませず、必ず一次の論文まで辿ってください。この手の話はいちばん盛られやすいところです。